告訴と告訴状の書き方シリーズ①

犯罪被害に遭遇した際、被害者が取るべき行動の一つに「告訴」があります。告訴とは、犯罪事実を捜査機関に申告し、犯人の処罰を求める法的手続きです。このコラムシリーズでは、告訴の手続きや告訴状の作成方法などを被害者の視点から詳しく解説していきます。第1回目となる今回は、告訴・告発の基本的な内容と親告罪について、お伝えします。

告訴とは、犯罪の被害者等が、捜査機関に対して犯罪事実を申告して犯人の処罰を求める意思表示のことをいいます。

例:AがBから殴られて傷を負ったため、被害者Aが警察に「私はBから殴られて傷を負った。傷害罪で犯人Bの処罰を求める。」などの意思表示をした。

告発とは、犯罪の被害者等ではなく、第三者が捜査機関に対して犯罪事実を申告して犯人の処罰を求める意思表示のことをいいます。

例:AがBから殴られて傷を負ったため、一部始終を目撃していた第三者Cが警察に「AはBから殴られて傷を負った。傷害罪で犯人Bの処罰を求める。」などの意思表示をした。

告訴や告発を原因として捜査開始もありえる

警察などの捜査機関は、何らかの原因から犯罪が発生したのではないかと疑って捜査を開始するわけですが、この「捜査を開始するに至った原因」のことを特に「捜査の端緒(そうさのたんちょ)」といいます。そして、告訴や告発は法令上、「捜査の端緒」に挙げられているため、告訴や告発をきっかけとして警察が捜査を開始することもあります。

例:AがBから殴られて傷を負ったため、被害者Aが警察に告訴。警察はAからの告訴をきっかけに捜査を開始してBを検挙。

警察などが捜査をした結果、犯人を起訴するかどうかは検察官が決定しますが、一定の犯罪については、被害者の意思を尊重し、告訴がなければ犯人の起訴ができないことになっています。

こうした起訴をするために告訴が必要な犯罪の種類のことを、「親告罪(しんこくざい)」といいます。

例:検察官は、親告罪のひとつである名誉毀損罪の事件を捜査していたが、被害者が告訴を取り下げたため、犯人を不起訴処分にした。

親告罪とされている主な犯罪

  • 名誉毀損罪
  • 侮辱罪
  • 器物損壊罪
  • 私用文書等毀棄罪
  • 信書開封罪
  • 信書隠匿罪
  • 秘密漏示罪
  • 未成年者誘拐罪
  • 未成年者略取罪
  • 過失傷害罪
  • リベンジポルノ被害防止法違反

犯罪の中には、犯人と被害者に一定の親族関係がある場合のみ親告罪として告訴が必要となるものがあります。こうした犯罪の種類を「相対的親告罪」といいます。

被害者が一定の親族の場合、不必要に家庭の平和を害することのないよう配慮がなされており、被害者の告訴がなければ起訴されないことになっています。

相対的親告罪とされている主な犯罪

  • 窃盗罪
  • 占有離脱物横領罪(遺失物横領罪)
  • 不動産侵奪罪
  • 詐欺罪
  • 電子計算機使用詐欺罪
  • 背任罪
  • 準詐欺罪
  • 恐喝罪
  • 横領罪
  • 業務上横領罪

全ての犯罪について告訴や告発ができます。

ただし、事件を担当する捜査員の人数には限界があり、犯罪の悪質性や法定刑の軽重、証拠の有無などによって、告訴や告発の難易度は変わります。

公務員は、その職務を行うことにより犯罪があったと認めた場合には、刑事訴訟法239条2項で告発義務が課せられています。

例:公務員が同僚の犯罪行為を市民からの投書で知ることになり、警察に告発した。

告訴は、特定の犯人に対するものではなく、犯罪が行われた事実を申告して犯人の処罰を求める意思表示なので、犯罪行為が特定できれば、犯人を特定できなくても告訴状に「氏名不詳」などと記載して手続きが可能です。

告訴は「犯罪事実の申告」と「犯人処罰の意思表示」をする手続きなので、これらの2つが必要となります。

犯罪事実の申告

どのような犯罪で、どのような被害が発生したのかを特定する必要があります。この点、犯罪と被害発生については最低限、日時・場所・行為・被害内容などを犯罪行為が特定できる程度に申告することが必要です。

犯人処罰の意思表示

犯人処罰の意思表示は実質的に判断されることになるので、告訴状を警察等に提出する場合は形式面のみではなく、実質的な内容としても犯人の処罰を求めていることを明確にする必要があります。

前述のとおり、告訴は捜査の端緒になるので、告訴をきっかけとして捜査の開始が可能です。しかし、これは告訴前には捜査を開始しないといった意味ではなく、たとえ告訴前であっても、犯罪の疑いが生じた場合には捜査に着手することが可能となります。

もっとも、告訴が起訴の条件となる親告罪の場合は、告訴されていない状況が捜査そのものを妨げるものではありませんが、被害者やその家族の名誉、信用等を傷つけることのないよう、特に注意しなければならないことになっています(犯罪捜査規範70条)。

告訴は、犯罪被害者が正義を求めるための強力な手段です。告訴をすることで被害者は自らの声を捜査機関や司法の場に届けることができます。このコラムはシリーズを通じて、告訴や告訴状の作成に関する知識を深め、被害者が自らの権利を主張しやすくなることを目指します。次回以降は、告訴権者・告訴のタイムリミット・告訴状の作成方法など、具体的な告訴の手続きについて詳細に解説していきます。

瀧行政書士事務所はこちら

1981年生まれ和歌山県出身の行政書士。京都府警察官を経て京都で行政書士事務所を開設。告訴状や被害届など犯罪被害者のサポートに注力。

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