詐欺被害に遭わないために!詐欺罪の成立要件・犯人の共通点や対処法

「まさか自分が…。」詐欺の被害は決して他人事ではなく、巧妙化する手口によって、多くの人が被害に遭っています。この記事では、詐欺罪の成立要件や被害者に共通する犯人の特徴、被害を受けた場合の対処法などを解説しています。詐欺かも知れないと不安を感じたことがある方は、ぜひ参考にしてみてください。

詐欺罪とは、人を騙して金銭などを交付させたり、財産上不法の利益を得たりする犯罪です。
詐欺罪は刑法第246条1項と2項で規定されており、金銭などの財物を交付させた場合は1項詐欺、財物以外の財産的利益の場合は2項詐欺(詐欺利得罪)と呼びます。

詐欺罪の成立では、次の要件①から⑦にあてはまる事実が必要となります。

要件①:人を欺く行為

「人を欺く行為」とは、欺罔行為(ぎもうこうい)ともいい、いわゆる「被害者を騙す行為」のことです。
「被害者を騙す行為」は積極的に嘘をついて騙す行為はもちろんですが、あえて本当のことを言わなかった場合でも、騙す行為に該当すると判断される可能性があります。

要件②:被害者の錯誤

「錯誤」とは、被害者の心の中の認識と実際の事実が一致しておらず、認識と事実の不一致を被害者自身も気が付いていない状態を意味します。
つまり、犯人の欺く行為によって被害者が勘違いに陥った状態のことをいいます。

要件③:財産的処分行為

財産的処分行為とは、被害者が、犯人から欺かれて錯誤に陥り、その錯誤によって財物や財産上の利益を交付する行為のことをいいます。
例えば、犯人が最初からお金を返すつもりがないのに被害者を欺いた結果、被害者は「後日返してくれるのであればお金を貸しても問題ない」との錯誤に陥り、犯人に金銭を交付する行為などがこれにあたります。

要件④:財物や財産上の利益の移転

被害者の陥った錯誤に基づいて、実際に財物や財産上の利益が犯人に移転した場合、詐欺罪は既遂となります。特に財物が不動産の場合は登記の移転が必要となります。
この点、詐欺罪の他の要件を満たした上で、財物や財産上の利益の移転のみが行われなかった場合は、詐欺未遂罪となります。

要件⑤:因果関係

上記「人を欺く行為」「被害者の錯誤」「財産的処分行為」「財物や財産上の利益の移転」の全てが因果関係(原因と結果の関係)で繋がる必要があります。

要件⑥:詐欺罪を犯す意思

人を欺く行為の時点から、被害者をだまして勘違いさせ、財物や財産的な利益を交付さようとする意思(もしくは、それでも構わないという意思)が犯人に必要となります。

要件⑦:不法領得の意思

他人の財物や財産的利益の権利者を排除し、自己の所有物や利益として、その経済的用法に従った利用や処分をする意思を不法領得の意思といいます。
詐欺罪の成立には不法領得の意思が必要と考えられますが、他の要件が認められれば、通常は不法領得の意思が認められる方向に傾きます。

詐欺罪の犯人の特徴には次のようなものが挙げられます。

これらはいずれも詐欺罪の犯人が被害者に対して疑問点の解消や考える時間を与えず、なるべく証拠を残したくないといった共通点があります。儲け話や甘い話で上記のいずれかに該当する場合は、危険信号として詐欺の場合の対処法を考えておくことが安全といえます。

証拠の保存

詐欺罪は簡単に認められるものではなく、後から証拠を準備できないケースも少なくないので、可能な限り犯人とのやりとりの証拠などを保存しておきましょう。

専門家への相談

詐欺罪の被害にあったかも知れないと感じた場合、なるべく早い段階で弁護士などの専門家に相談することが大切です。被害者本人が詐欺と感じた時点では、すでに犯人との連絡が取れなくなっていることも多く、被害回復が難しくなるケースも少なくありません。

警察への相談

詐欺罪の被害は当然のことながら警察に相談することが可能です。
警察相談であっても、やはりポイントとなるのは客観的な証拠の提示であることに変わりはありません。特に金銭をだまし取られた場合、被害者から犯人へ渡した金銭について、どのように被害者が金銭を準備して犯人に交付したのかの説明を求められることがあります。

詐欺罪の被害を受けた場合、捜査機関に犯人の処罰を求める刑事告訴をすることができます。一般的に、刑事告訴は告訴状を作成して警察署に提出する形で行います。
告訴状の作成や警察への提出は、弁護士や行政書士といった専門家が代行することも可能です。

詐欺は手段が巧妙化しており、知らぬ間に被害を受けている可能性もあります。
特に証拠は後から準備することが難しく、被害説明の場面で証拠がハードルとなってしまうケースも少なくありません。
日ごろから書面やデータで約束の証拠を残す習慣をつけ、不安があれば早めに専門家に相談しておくことが解決への近道となります。

1981年生まれ和歌山県出身の行政書士。京都府警察官を経て京都で行政書士事務所を開設。告訴状や被害届など犯罪被害者のサポートに注力。